管理会社のいいように運営され、最初はとんでもないマンションに引っ越してきてしまったと思いましたが、重松先生のアドバイスに従って改革派中心の理事会を作りました。その直後、今度は一方的な契約解除を通告されましたが、重松事務所のサポートで無事解決。その他多くの問題解決のため、引き続きサポートをお願いしているところです。
築40年超も、立地と周辺環境の良さからほとんど空きもないという東京都内の某マンション。しかし、そのマンションは、管理会社主導で管理会社の了解をもらわないと何もできず、不明朗な支出、修繕積立金会計がないどんぶり勘定、長期修繕計画書がなく適切な修繕がされていない状態が続くなど、酷い状態でした。高齢化、賃貸化も進む中、何とかしようと奮闘されていた現在の管理組合理事長大橋様に、依頼に至った経緯や現在までの状況などをお伺いしました。
竣工 | 1973年 |
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戸数 | 約290戸 |
マンション形態 | ファミリータイプ |
管理形態 | 管理会社に全面委託 |
主な支援内容 | 顧問契約(長期コンサルティング・支援契約)/管理会社変更/管理規約の改正/長期修繕計画サポート 等 |
――ご相談前のマンションの状況を教えていただけますか?
私がこのマンションに住み始めたのは数年前からなのですが、築40年を超えているマンションなので、竣工時と比較すると世帯構成が大きく変わっており、組合員の高齢化の他、賃貸化も進み、外部に居住している組合員が約3分の2という状況でした。
それでも、地下鉄の駅からとても近い場所に位置しており、周辺の環境も大変良いので、空き家もほとんどない状態でした。
引っ越して間もなく、当時の理事の方からお話しをいただきびっくりしたのですが、このマンションは管理会社が管理のすべてを仕切っていて、管理会社の了解をもらわないと何もできないようになっているとのことでした。
管理会社は聞いたこともない会社で、国交省登録はあったもののこのマンションだけを管理している会社でしたし、その会社の代表者が住込みの管理員としてマンションに常駐しており、まるで私たち区分所有者は、賃貸マンションの店子のような存在で、いわゆる「管理会社主導」のマンション管理でした。
悪く言えば、管理会社のいいように運営され、理事はそれに従っている状態でした。
――もう少し具体的にお話しいただけますか?
はい。例えば、帳簿を見ても会計処理は不明朗で、証票類もきちんと整っておらず、業者に対するお中元やお歳暮が悪しき習慣として行われ、結構な金額が支出されたりしていました。
▼お中元・お歳暮として支出されていたお金
また、管理費の滞納は、世帯数からするとさほど大きな金額ではありませんでしたが、それでも管理がいい加減できちんと把握されておらず、管理台帳と貸借対照表の未収金の金額が違ったりしている状態でした。会計ソフトは使わず、手計算で会計処理をやっていたからです。
それと、築40年を超えているのに給排水管の改修工事が適正に行われておらず、頻繁に漏水事故が発生していました。
――なるほど、すごいですね・・・
そのような状態をどう改善しようとお考えになられたのですか?
こんな状態が良いはずがないことは誰にでもわかりますが、どうやってよいかは、私たちではなかなかわかりませんでした。正直な話、最初はとんでもないマンションに引っ越してきてしまったと思いました。
――確かに・・・(笑)
やっぱりそう思いますよね(笑)。
管理会社の代表者に改善を申し入れても、いいようにはぐらかされるし、対抗して強硬な手段に出ようと思っても、専門的知識は相手の方が上なので本当に困ってしまいました。「そんなに言うならもう管理をしない!」と言われてしまいそうな雰囲気でしたし・・・
――そんなこと言われたら大変ですものね。
ただ、そういう状況だとズルズルといってしまいそうですが・・・
はい。本当にそうなりそうでした。
しかし、当時の仲間の一人が国土交通省に、マンション問題の相談窓口があるらしいと調べてくださったので、思い余って電話してみることにしました。
――電話してみてどうでしたか?
国交省の担当者は、個別の具体的な問題に対する相談には乗っていただけませんでしたが、「そのような場合はマンション管理士に相談してみたらどうですか?」ということだけは言ってくださいました。
そこで、私がお勤めをしていた時の後輩に相談したら、インターネットで複数のマンション管理士さんのリストを出してきてくれました。その中に重松先生がいらっしゃったのです。
また、仲間もインターネットでマンション管理士さんを調べていたらやはり重松先生がいらっしゃることが分かりました。ホームページを見てよさそうな人を絞り込み、最終的には、重松先生のほか東京と神奈川の方の計3名の管理士さんを相談相手先として選別しましたが、距離が近いこともあり、まずは重松先生に相談してみようということになりました。
――東京在住のマンション管理士さんではなかったのですね。
はい、そうです。もし神奈川の方が近ければ、まずは神奈川のマンション管理士さんに相談したかもしれませんね(笑)。
――そ、そうですか(笑)。それでは、相談した時のことを教えていただけますか?
すいません、とにかく早く相談してみたかったものですから(笑)。
だから予約も電話でして、当時の仲間3名で重松事務所を訪問することにしました。
マンション管理士さんに関する知識もさほどなかったので、一般的にどのような方々が、どのような事務所を構えていらっしゃるのかもわかりませんでしたが、会議室のある事務所をきちんと構えておられましたし、所長の重松先生の他複数のスタッフさんが働いている様子を拝見して、割ときちんとした事務所であることは理解できました。
――(割と・・・)
また、初対面の重松先生の印象は、あっさりした性格の方のような気がしましたし、清潔感もありました。頭の上の方が少々寂しい感じでしたが(笑)。
――・・・(苦笑)
それと、最初に事務所の報酬に対する考え方をきちんと話してくださったので安心しました。
初回の訪問相談は無料でやってくださるとのことでしたので、いっぱい相談させていただきました(笑)。
――(笑)。実際に相談されていかがでしたか?
重松先生は、私たちが困っている内容をきちんと聞いてくださったうえで、やはり理事会を健全化し、理事主導で運営できる体制を作らないと難しいとアドバイスをくださいました。
具体的には、改革を進めることに賛成の方が理事会の多くを占めないとどうにもならないことが分かりました。逆に言うと、志のある方が理事になったうえで重松事務所の支援を受ければ、適正なマンション管理を行うことができそうな気もしてきました。
私たちのマンションは、先ほどもお話ししたとおり外部組合員が多いので、当時の役員選出方法は、輪番制ではなく、理事は立候補と推薦を軸に選出していく方法でした。
そこで、マンションの改革に理解を示してくださる方を集めて立候補をお願いし、通常総会後に改革派が多数を占める理事会が出来上がったら、その時点でまた重松先生に相談することにして、その日は帰宅しました。
――なるほど、まずは体制を整えてから、ということになったのですね。
その後、実際にうまく体制づくりができたのでしょうか?
重松先生のアドバイスに基づいて、まずは私を含めて改革に積極的な方数名にお願いして理事に立候補していただくことにしました。
また、従来の理事の方にも趣旨をお話しして理解していただき、多くの方に残っていただくことにしました。
――立候補や留任していただける方が見つかったのですね。
総会は大丈夫だったのでしょうか?
はい、大丈夫でした。そして、晴れて改革派の理事会が誕生することになりました。総会終了後には、新しい理事たちの間で、これからゆっくりと時間をかけていい管理組合にしていこうと話し合いもしました。
ところが無事総会は終了したものの、そのあとの第1回目の理事会で、事件が起こったのです。
――一体何が起こったのでしょうか?
総会で管理委託契約が更新されたばかりの管理会社が、突然に契約解除をいい出したのです。
――突然にですか!?
新体制になってこれからという時に、いきなり契約解除は驚きますよね・・・
はい・・・。もう、びっくりするだけでなく途方に暮れてしまいました・・・。
――でも、何もしないわけにはいきませんよね・・・
はい。まずは互選で理事長を決めなければなりませんが、このような事態になってしまったので、今まで積極的に活動してくださっていた方に理事長をお願いしたのですが、固辞されたため、結局私が担がれる形で理事長になりました。
――そのような経緯だったのですね。
そうなんですよ。
当初は、過去の理事会や理事長の事情等もあるだろうと思っていたので、先ほどお話ししたとおり、ゆっくり時間をかけて引継ぎと改革をしていこうと思っていました。ところが、事態が一変してそんなことは言ってられなくなってしまいました。数か月後には管理会社がいなくなるので、なんとかしないと私たち立候補した理事の責任も追及されかねないという気もしました。
――改革のために理事になって責任を追及されたらたまらないですよね・・・。
何をしたわけでもないので実際にそうなったかはわかりませんけど、管理会社がいなくなった後の対応は速やかに行わないと、いろいろと困ることや問題が出てくると思いましたので、直ちに重松事務所に相談にいくことになりました。
――今度はもう、依頼が前提ですね?
はい、そうです。
重松先生には、まずは新しい管理会社を選ぶ作業のお手伝いからお願いすることになりましたが、私たちの心配とは裏腹に重松先生は意外と平然としていました。最初は真剣に考えてくれているのかなという気持ちもしましたが、実はそうではなく、きちんと手順を踏んでやれば、そんなに心配しなくても大丈夫ということでした。また、今回は管理会社の方から契約を解除するという話ですので、手続的には楽だと仰っていました。
まさかこんなに早く重松先生にお願いすることになるとは思っていませんでしたが、新しい管理会社を3ヶ月以内に選ばなければならないので、スケジュール的には大変でした。
――3ヶ月という短期間でどのように進んでいったのでしょうか?
まずは、私たちのマンションの規模や事情にふさわしい管理会社候補の評価リストを作っていただき、そのリストから私たちが複数の管理会社候補を選定して見積もりをお願いしました。
見積もり取得については、重松事務所が共通の仕様書や明細書を作成してくれたので、統一性のある見積書を取得することができました。
その後、各社の見積もりに基づいた比較一覧表(評価書)を基に聞き取り調査等を経て、最終の管理会社候補を決めるところまでとてもスムーズに事が運びました。
▼共通仕様書、見積要項、比較一覧表
――最後は臨時総会でしょうか?
はい。7月に臨時総会を開催して新しい会社を承認してもらい、8月から早速実際の管理業務にかかっていただきました。
あっという間の3ヶ月でしたが、間が空くことなく無事新しい管理会社を決めることができて、とにかくホッとしました。
――かなり気を張っていた3ヶ月だったのではないでしょうか。お察しいたします。
ありがとうございます(笑)。
でも、新しい管理会社が総会で承認されて私たちはホッとしてしまいましたが、重松先生はそこからが大変だと仰っていました。
――何が大変なのか教えていただけますか?
はい。まずは、以前の管理会社が管理している管理組合の資産や名簿をきちんと新しい管理会社に引継ぐ作業をしっかりしないといけないということ、それから、新しい管理会社が契約に基づいた仕事をきちんと実施しているかどうかをチェックしないといけないということです。
私たちは新しい管理会社を選ぶことに一生懸命だったのでそこまでは気が付きませんでしたが、重松先生曰く、こちらの方がはるかに手間もかかり大変とのことでした。
私たちは新しい管理会社が決まって全て終わった感じでいましたし、実際、それ以降についてはお任せ状態でしたが、8月からの重松事務所の仕事は、引継ぎ内容の確認と新管理会社の業務チェックでとても忙しかったようです。
私もその作業内容を少しだけ見たりお伺いしたりしましたが、もし自分たちだけだったら、とてもじゃないけどそこまでは出来なかったと思いましたし、すぐに重松先生にお願いして正解だったと思いました。以前の管理会社が、私たちに協力してくれたかもわかりませんし・・・。
――管理がかなり杜撰で会計も手計算だったというお話しでしたから、相当大変そうですね・・・
はい・・・。長いこと手計算で会計処理をやっていたものですから、管理組合の未収金や繰越金をきちんと調査して確定させる作業は、管理会社も含めて相当大変だったと伺っています。
▼過去の帳票など
それでも、無事引継ぎが完了し、現在は会計処理もきちんと行われるようになりましたので、本当によかったです。
――その後、重松事務所にどのようなことをお願いしましたか?
重松先生といろいろ話し合いながら問題点を洗い出しましたが、私たちがやらなければならないことが、まだまだいっぱいあることに気が付きました。
1.管理規約の大改正
管理規約は平成9年に改正されたものがあるのですが、現在の法律や環境には適合しておらず、トラブル防止のためにも早急な改正が必要でした。
2.給排水管の改修計画
給水システムは、地下ピット受水槽(現在は認められていない方式)を使用しており、飲料水が清潔とは言い難い状況です。
また、各部屋で排水詰まりや漏水事故が多発していたので、本格的な改修が必要だと認識していました。3.長期修繕計画の策定
長期修繕計画書はありませんでしたので、これも作らなければなりません。
しかし、当時の私たちのマンションは修繕積立金会計がなく、管理費と修繕積立金が一緒になったいわゆる「どんぶり勘定」の会計でしたので、管理規約を改正して会計基準を整備したうえで、長期修繕計画書を作成する必要がありました。4.修繕積立金と管理費の検討
会計の「どんぶり勘定」を解消し、管理費と修繕積立金の額を決めなければなりませんが、これも組合員のお財布に大きな影響を与えるので慎重に手順を踏んで進める必要がありました。
ですから、今お話ししたことをひとつひとつ解決(対応)していくことをお願いしました。そのうえで、重松先生にお願いすることと私たち自らがやることを選別しながら取り組むことにしました。
――なるほど問題山積だったのですね。
そうなんです。これだけの問題を解決していかなければならないのですから、私たちだけでは無理ですよね。
ただ、新しい管理会社は業界でも大手の管理会社でしたので、理事の中には「管理会社に相談しながらやっていけばいいのではないか」と仰る方もいました。
――そう思われる方もいらっしゃるでしょうね。
はい。しかし、管理会社は私たちにとって貴重なパートナーですが、あくまでも契約に基づいて管理組合の委託業務をやってくださる立場です。全ての管理会社が以前の管理会社と同じだとは思いませんが、根本的に私たちとは性質が違うことは言うまでもないことです。
ですから、相談すべきところは相談すればよいと思いますが、大前提として、まず私たちがきちんと管理会社を管理監督する必要があります。私たちは、自分たちの分を含めて区分所有者から大変な額のお金を預かっているのですから、以前のような無駄遣いをしないで適正な管理を行うには、管理会社任せではいけないのです。
でも、私たちの知識だけではそれが難しいので、重松事務所の力を借りながら運営しています。
また、今まで管理会社にさんざんな目にあわされてきましたので、私たちの立場でいつでも考えてくれる信頼できる相談相手が欲しかったのです。そして、それは例え大手の管理会社であっても難しいことなのです。
――管理会社変更後に重松事務所が行った具体的な業務はどのようなものですか?
やはり管理規約の大改正でした。
管理規約はありましたが、重松先生が仰るには現在の法律や社会情勢に全くあっていないので全面改正が必要とのことでした。でもそんなことを言われても、私たちにはどうすることもできませんので、重松事務所に全面的にお願いすることにしました。
――丸投げしたということでしょうか?
いえいえ。別途費用をお支払いすればそれに近いこともできたのかもしれませんが、毎月の理事会で約1時間を勉強会に充てて1年かけて改正作業を進めていく形で、重松事務所に主導してもらいながら一緒にやっていきました。
ただ、一緒にと申しましても、規約のチェック作業や権利関係の調査などは全てやっていただきましたし、資料や書類作成、段取りなども全てやっていただきましたので・・・そう考えると、実際にはかなりお任せ状態ですね(笑)。
▼重松事務所がチェック、調査した箇所の一例
【左】最高裁判決で共用部分とされた部分まで専有部分になっていました
【右】重大変更と軽微変更の区分が書いてありませんでした▼共有部分を明確にするための図も作成
――(笑)。でも、そういうスタイルなら、理事のみなさんも管理規約について理解が深まったのではないでしょうか?
そうですね。自信があるとは言えませんけれど(笑)。
でも、最初は難しそうだし大変そうだと思いましたが、具体的なトラブル事例なども検討しながらやりましたので結構楽しかったですよ(笑)。だって、堅苦しい管理規約の条文の説明だけではイメージがわいてこないのですが、ペット問題やリフォーム工事でのトラブル事例はうちのマンションでも身近に感じることができますので、とても理解しやすかったです。
――総会での承認は問題なかったでしょうか?
はい。管理規約の改正には、区分所有者の4分の3の賛成を集める必要があるとのことでしたので、総会に諮る前には、重松事務所のアドバイスに従って説明会等も行いとても丁寧に進めました。
おかげで、今年の総会で無事に承認されました。
管理会社の時ほどではありませんでしたが、やはり承認されたときはホッとしましたし、新しくなると気分がいいものですね。▼内容を一新し、印刷・製本し直した管理規約
――重松事務所への報酬額を教えていただけますか?
月額10万円+消費税で契約しています。
他の理事からは、個別に手間がかかる業務については別途に報酬をお支払いするべきとの意見もありましたが、この金額で日常の会計監査もやっていただいていますし、管理規約の改正作業も権利関係の調査を含めてすべてやっていただき、現状に則した管理規約も無事完成しましたので、大変満足しています。
――今後のご予定は?
管理規約の改正は無事終わりましたが、その他の問題を解決していかなければならないので、引き続き重松事務所にサポートをお願いしているところです。
具体的には、長期修繕計画の整備と修繕積立金の改定ですね。
▼現在検討中の防犯カメラや長期修繕計画に関する理事会の様子
その後は、今まできちんと実施できていなかった修繕関連でも、いろいろと相談しながら進めていきたいと考えています。
ご協力ありがとうございました。